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2023年12月03日

琉球舞踊公演『いろえがき2』見てきました

琉球舞踊公演『いろえがき2』

2022年の6月に1回目の公演が行われた女性舞踊家の会「いろえがき」の第2回が2023年12月2日に国立劇場おきなわの小劇場で行われた。
会場はほぼ満員。
和やかな雰囲気の中にも公演に対する期待が溢れている。
私は開演前のこの雰囲気が好きだ。
出演は1回目と同じく、
安座間本流 大北満之会 師範 山城亜矢乃さん。
琉球舞踊 太圭流華の会 師範 孤島丘奈さん。
琉球舞踊 朱日流 師範 知花小百合さん。
琉球舞踊 真踊流 佳喜の会 師範 喜納かおりさん。
阿波連本流 啓扇紅節の会 師範 伊志嶺忍さん。
実力派ばかり。
地謡もさまざまな公演で名前を見る今をときめくメンバーが揃っている。
期待が高まるのも当然だろう。

幕開けの創作舞踊は1回公演でも幕開けを務めた山城亜矢乃創作の「寧麗」
まだ日が上らない早朝をイメージする導入から、女性たちが日々の平和を願って踊るというのは見事だった。
前回の反省を踏まえてさらに練り直したということだ。
素人の私にはどこに変化があったのかはっきりとわからなかったが、踊りの精度は上がっているように感じた。
1点だけ今後検討していただきたいのは、冒頭で入った鳥の声だろうか。
現代では効果音として生の伴奏に鳥の声などを重ねることができるが、必要な演出なのか考えてしまう。
舞台幕や照明などの舞台効果も舞踊を構成するものの一つではあるが、舞踊をメインとした公演で生演奏に録音音源を重ねるのはわかりやすいがもったいない気もした。

この「いろえがき」公演は研鑽と挑戦の舞台と聞いている。
むんじゅる、諸屯、本貫花はどれも舞踊の世界観を楽しめる内容だったと思う。

繁盛節、高平良漫才は二才踊りとして人気が高い演目で私も好きだ。
しかし、女性舞踊家が踊ると少々小さくなってしまうのが物足りない。
よく男性の身体は外に開いているが、女性は内側に向かう傾向があると聞く。
そういったジェンダーの差が出てくるのだろうか。
同じ振りでも女性の方がまろやかに見えてしまうのは、私の先入観からなのか?
今後も注意して見ていきたい。

戻り駕籠はチャレンジ枠だったと思う。
こちらは取材で伺った際、お稽古を見せていただいた。
指導は高宮城実人さん。
駕籠かきは杖を持っているのだが、高宮城さんが杖を持って立つとただ立っているだけなのにピタリと決まる。
これまでに何度も上演してきた経験値もものをいうのだろうが、舞台経験からするとチャレンジする女性舞踊家も同じくあるはず。
何が違うのだろうか。
「身に付く」という言葉があるが、この演目はじめ繁盛節、高平良漫才も「振りは知っていてその通りに動けるけれど身に付くまでには到達していない」ということなのだろうか。
高宮城さんの、駕籠かきとしての杖一本の持ち方にそんなことを感じた。
お稽古時に苦戦していた箇所があったが、そこはプロ。
本番では懸念箇所もクリア、お稽古より磨かれた内容を見せてくれた。
チャレンジ枠の意味は大いにあったと思う。

締めくくりは新作。
伊志嶺忍作の創作舞踊「鈴なりの調べ」
神楽鈴、獅子頭といった小道具を用いて、場を清め、邪をはらい心の安定をテーマにしている。
伊志嶺さんの可愛らしい容貌と説明から巫女をイメージした女踊だと思っていたのだが、二才踊だったのは驚きだった。
若衆ではなく二才を設定したのはよかったかもしれない。
若衆はその歳若さだけで息吹、未来を表現できる存在だと思うが、「平和であるよう、心が平穏であるよう」と願う……もの思う歳かと言われると少々弱いように思う。
その点、二才……成人した男性の場合、視野も広がりいろんな経験からこのような考えも出てくるものではないか。
いい内容だったと思う。

琉球舞踊の世界でも産休後、また舞台に戻って来れるかどうかという課題があると聞いた。
20代の後半か30代に入った頃だったろうか。
舞台関係の先輩に「成功したいならとにかく続けなさい」と言われたことがある。
その時、「続けることが成功のポイントとはなんだかな。もっと必殺技のような劇的なものがあるのでは?」と思ったが、50代になって続けることの難しさを実感している。
私は独身で子供もいないので好き勝手に生きているが、結婚して子供を持った女性となるとそうはいかないだろう。
産休、育休で少し(といっても子供の手が離れるまでとなると長い時間)現場を離れている間に、若手は育ち、いつの間にか場所がなくなってしまったという方もいたし、家のことで手一杯で仕事を諦めた方もいた。ジョブチェンジで新しい世界に羽ばたいた方もいるので、同じ場所に戻ってくることだけが幸せではないことも理解している。
最近は男性も「手伝い」ではなく、当たり前に家事育児をするように意識も変わってきているようだが、それでも女性が男性と同じように自分の仕事に集中できるかといえばまだまだハードルは高いように見える。
「いろえがき」公演はそういう意味でも女性が輝く場になって欲しいし、なるのではないか。
後進にも刺激となった公演だったと思う。
今後の公演も楽しみにしている。

琉球舞踊公演『いろえがき2』見てきました


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