エッセイ「歴史ってなんだろな。映画刀剣乱舞から思うこと」

ぱな87

2023年04月02日 23:18

歴史ってなんだろな。映画「刀剣乱舞」から思うこと。

 刀剣乱舞の映画の話をしますが、刀剣乱舞についてではなく、刀剣乱舞からこんな事考えているというお話です。
 映画「刀剣乱舞―黎明―」見てきました……というか入場者特典をコンプリートしたさに劇場に通っております。一度ハマると際限なくハマるのでゲームには手を出すまいと思っていたのにまんまとハマってしまい、こうですよ。
 刀剣乱舞を知らない人のためにちょっと説明すると、刀剣乱舞はジャンル的には育成ゲームになるだろうか。歴史改変を目論む時間遡行軍を、物に宿る力を励起することができる審神者によって呼び出された刀剣の付喪神が阻止するというストーリーだ。刀の擬人化もの……ということになるが、刀の辿ってきた歴史があるがゆえに、単に擬人化されたキャラクターがかっこいいというだけでない深みを与えている。刀剣乱舞がきっかけで刀や歴史に関心を持ったという方も多い。ゲームやアニメ、2・5次元だけに留まらず、刀を所蔵している博物館や、地域、企業とのコラボも多く展開されている。刀剣乱舞の制作陣は最初からここまでの展開を考えていたのかはわからないが、すごいところに着目したものだと感心する。
 さて、映画「刀剣乱舞―黎明―」についてである。1作目の「継承」から4年。次回作はいつだろうかと心待ちにしていたので、事前情報は入れないようにして気合を入れて見に行ってきた。といっても、今回の舞台は現代、「仮の主」がいるということは知っていたので多少不安ではあった。公開後、ネット上で「特撮ものだった」という声が多くあったが、それに尽きるかなと思う。「もしも刀剣男士が現代にいたら」という妄想を具現化してくれたのは面白かったけれど。撮影規模は前作を大きく上回り、刀剣乱舞というコンテンツが大きく育っているということを感じたが、前作で表現していた歴史とはどういう物なのか。歴史は過去のものではなく、今を生きる私たちに繋がっている。今を生きる人々を守るために歴史を守るという刀剣乱舞の世界観は薄まってしまったのは残念だ。だが、今回の「黎明」にも重要なポイントがあると感じている。その一つは「排除されていった者たちの歴史」である。
 「黎明」は、平安時代……都に災いをもたらす大江山の酒呑童子を討ち取るというところから始まる。酒呑童子は大江山を根城とする鬼と考えると、素直に人に仇なす存在をやっつける=正義、正しいこと判断してしまうが、映画の冒頭では政治的に都合が悪い存在を抹殺するために理由をつけているということが示されている。そう。歴史とはある部分で勝利者の歴史でもあるという一面を語っているのだ。これはとても重要なことだと思う。何らかの戦いで勝利したものが世の中を動かしていくことになるので、勝利者の歴史が正しいこととして語り継がれ、敗者の歴史はそこに埋もれてゆくというのは事実だ。そしてそれは過去のことではなく、現代を生きる私たちに関係している。
 ゲームと現実を一緒にするなというファンも多いが、どんなコンテンツも社会や時代を反映しているわけだから、そこから積極的に考えるというのは悪いことではないと思う。歴史を都合よく修正しようとしているのは何も時間遡行軍だけではない。政府による公文書の改ざんなど時間遡行軍の所業と同じ。それによって正しきことが歪められどうなったのかを現在進行形で私たちは見ているわけである。改ざんされているのは公文書だけではない。歴史の教科書にも注意を向けて欲しい。沖縄はこれまでも沖縄戦における日本軍の住民に対する対応や、集団自決の件に関して対峙してきたが、最近の出来事で言えば小学校6年生の社会の教科書だろう。集団自決と日本軍の関与がきちんと記述されていなかったり、島田知事についての記述が映画「島守の塔」のセリフを根拠にしていたりと正確性に欠ける部分があったというのもだ。「たったこれだけのこと?」ではないのだ。歴史の改変を狙う時間遡行軍のように派手にやってくれば「これは危うい」とすぐにわかるだろうが、現実は見逃してしまうほどのささやかな変化だ。刀剣男士のような歴史の守護者が華麗に退治してくれればいいのだが、私たちの生きる世界には刀剣男士はいない。私たち一人ひとりが注意深く社会を見て今を守り、刀剣男士のような歴史の守護者にならなくてはいけないのだ。
 映画「刀剣乱舞―黎明―」は、「想い」の連発で(間違ってはいないんですが)これまで一貫してあった「歴史が語っているものの重要性」が薄れてしまったが、劇中でオッとなった一言を紹介しておく。
「常に己の進路を求めて止まざるは水なり」
 これは豊臣秀吉の知恵袋と言われた黒田官兵衛の「水五訓」と呼ばれる教えだ。昔の教えではあるが、今でも行動指針になる優れた考えだと思うのでこの機会に学ぶのはいいと思う。福岡から東京に向かうバスの中で、ギャル実弦がへしきり長谷部に向かって言う。どうしてギャル実弦が……というのは本編で確認して欲しいが、へしきり長谷部だけでなく、私たちにも投げかけられた言葉のように感じた。




映画「刀剣乱舞ー黎明ー」公式サイト https://touken-the-movie.jp
ゲームはこちら https://games.dmm.com
スマホ版もあるよ!
映画公開に合わせて、映画に登場する10振りプレゼント企画もあるので、始めようかなと思っている人はチャンス!
初めから三日月宗近がいる本丸になれます。
私は前回の「継承」時の特典に釣られて始めました。

映画「刀剣乱舞ー継承ー」
ラストに少し寂しく感じるシーンがあるけれど。素晴らしい作品だと思う。
見て〜〜〜ゲームしてなくてもファンタジーとして楽しめると思う。

ちなみに。
教科書に関するドキュメンタリー映画「教育と愛国」
機会があったら見て欲しい。

歴史は今に連なっているということと、政治家とは? をとても良く表現していた映画は「のぼうの城」
本編終わってエンドロールで泣いた。
これも見てもらいたい。

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